化石燃料の使用を継続しながら、大気中への温室効果ガス排出を抑制できると期待が高まる「CO2回収貯留(CCS)」。しかし今年、大規模プロジェクトがアメリカ、イギリスおよびドイツで相次いで中止に追い込まれました。
多額の費用を要する実験的な計画について、政治と資金面での問題が指摘されています。この2つの問題は互いに深く関係しており、経済問題の解決には、気候変動について国の確固とした政策や技術支援が必要となります。
しかし、CCSの研究・開発を前進させる努力も注目すべき進展がありました。カナダのオイルサンド(油砂)で大規模なCCSを行う初の試みは、13億5000万ドル(約1050億円)のコストの3分の2負担に政府が合意、1つのハードルを超えました。しかし、エドモントン近郊の「クエストCO2回収貯留(Quest Carbon Capture and Storage)」プロジェクトの実現までには、規制の問題も残っています。主導するシェル・カナダ・エナジー社率いるコンソーシアムが実行の最終決定を下すのは、その解決後になります。
2011年秋、南アフリカ、ダーバンで開催された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第17回締約国会議(COP17)では、CCS計画を含む「クリーン開発メカニズム」に初めて合意。発展途上国での温室効果ガス排出抑制に向けた革新的プロジェクトに資金援助を行う制度です。
また、一部の研究者は、二酸化炭素を地下に貯留するだけでなく、再利用する技術に取り組んでいるとのこと。
今年、アメリカ物理学会(APS)は2年間の調査の結果、再利用技術の経済的な実現可能性は疑わしいと発表しました。しかし研究者は、「APSはプロセス全体の利点を考慮していない。水素と結合させれば、炭化水素燃料として再利用できる」と反論しています。
(NATIONAL GEOGRAPHIC)
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