
論文の共著者に名を連ねるオーストラリア国立自然科学産業研究機関の研究員、ジョゼプ・カナデル氏は「人類が排出したCO2を大気中から除去する上で森林が非常に大きな役割を果たしている証拠が、初めて全地球規模で示された」と語り、「もし明日にでも森林破壊を止めれば、既存の森林と再生森林を合わせて、化石燃料の使用によって排出されるCO2の半分を除去できる」という発見に同氏は驚いているそうです。
今回の研究では、1990~2007年に森林が、大気中で主にCO2の形で存在する炭素を、年間約24億トン吸収したと推定しており、これは化石燃料によって1年間に排出される炭素の1/3にあたるといいます。
一方で論文は、食料や燃料生産、開発のため主に熱帯地方で進んでいる森林破壊によって、年間約29億トンの炭素が放出されたとしており、これは人類の活動によって放出される排出量全体の25%を超えるといいます。従来の研究では、森林破壊で放出される温室効果ガスの量は全排出量の12~20%程度と考えられていました。
熱帯地方で土地開墾のための伐採や野焼きの後に再生した熱帯林のCO2吸収力の高さは驚くべきもので、カナデル氏らの推計によると、熱帯林の再生によって毎年平均16億トンものCO2が大気から吸収されているといいます。
過去10年間の年間CO2吸収量を気候帯別に見ると、緯度の高い寒帯の森林が18億トン、温帯の森林が29億トン、熱帯の森林が37億トンとなっています。しかし、熱帯の森林の破壊と再生も計算に入れると、熱帯林は事実上のカーボン・ニュートラルになっていたそうです。
また、今回の新たな数字を合わせると、地球上で年間に石炭、石油、ガスの燃焼によって排出されるものの13%にあたる約11億トンの炭素を吸収する能力が、地球全体の森林にあることが分かりました。これまで、森林の炭素吸収力と森林破壊による排出量の増加の両方を過小評価していたとし、カナデル氏は「気候を守る戦略としての森林は、従来考えられていたよりも中心的な位置にある」と指摘しています。
(AFPBB News )
森林破壊によって放出されたCO2が、人類の活動によって放出される排出量全体の25%を超えるというのは驚きですね。今回の研究成果で、もっと森林の重要性が見直されることを期待します。