
地球温暖化説に対する懐疑論者は、1998?2008年には一定の気温上昇が見られなかったことを根拠に、温室効果ガスが地球温暖化の原因との見方を否定しています。
今回、研究を主導した米ボストン大学のロバート・カウフマン教授も、懐疑派の指摘がきっかけで研究を思い立ったととのことです。
カウフマン教授らの研究チームが、気温上昇を防いだ要因と結論付けたのは、石炭でした。石炭の燃焼量は、急激な経済成長を続ける中国を中心に、過去10年間で急増しました。石炭を燃やすと硫黄が排出されますが、カウフマン教授らはこの硫黄の粒子に妨げられて太陽光が地表まで届かず、温暖化を防いだと見ています。
カウフマン教授によると、こうした現象には前例があり、第二次世界大戦後の経済成長期に欧米や日本では温室効果ガスが急増しましたが、硫黄の排出量も急速に増え、その結果、温室効果ガスの影響が相殺されたといいます。研究は、地球の気温が上昇し始めたのは、先進国が硫黄排出量を削減する取り組みを始めた1970年初頭ごろからだと指摘しています。
世界の石炭消費量は、03?07年の5年間で26%増加し、うち75%は中国によるものです。中国は今も世界最大の温室効果ガス排出国であり、排出量も増え続けていますが、一方で石炭工場に汚染物質除去装置を設置するなど、ようやく大気汚染の防止対策を始めました。そして、こうした措置を講じたことで09年から再び、地球の気温が上昇し始めたとしています。
しかし、大気中の硫黄は一時的な冷却材の役割を果たす反面、酸性雨や呼吸器系の疾患の原因となるなど、数々の有害な影響をもたらします。このため、地球温暖化を阻止する手段を硫黄に求めることは「毒をもって毒を制すようなものだ」と、カウフマン教授は述べています。
(AFPBB News )
成層圏に硫黄粒子を注入させて、温暖化を抑制するという手法が以前から提案されていますが、これはオゾン層を破壊する事が指摘されています。温暖化も困りますが、オゾン層破壊によって皮膚ガンの危険性や生態系への影響も心配ですね。