◇「生物多様性」とは?
地球上では約3千万種、日本では約9万種の多様な生物が存在するとされています。これらの生物は、希少な動植物だけではなく、海や川、土中の微生物も含めて、微妙なバランスを保った生態系を形作っています。
しかし、現在は森林開発や環境の汚染など人間の活動が大きな要因となり、毎日100種の生物が失われ、歴史上、最も速いスピードで絶滅が進んでいます。国内でも4分の1の動植物が絶滅の危機にさらされていると言います。
生物多様性を考える一例に干潟があります。干潟がある浅い海には藻場があり、藻は水を浄化してくれます。きれいな水で魚が産卵し、生まれた魚を人間が食べる。埋め立てなどで干潟が損なわれてしまえば、このバランスは崩れ、人間の生活にも影響します。
会議では、自然の恵みを50年後、100年後も享受するためにどうすべきかを議論しま。
◇何を決めるのか?
1992年にブラジルで開かれた地球サミットに合わせて採択された生物多様性条約は、
(1)自然の恵みをもたらす生物多様性を守る
(2)生態系の恵みを持続的に使う
(3)植物や微生物などのもたらす遺伝資源から作られた利益を原産国にも配分する
の3つを理念に挙げています。この理念に基づき、2002年の会議では「2010年までに世界の生態系が失われる速度を著しく減速させる」という世界目標が設定されましたが、達成できませんでした。
今回の会議では2020年までの目標と、2050年までの中長期目標を「名古屋ターゲット」としてまとめる予定です。
ただ、気候変動枠組み条約が京都議定書で「温室効果ガス削減目標何%」と具体的な目標を掲げたのとは対照的に、生物多様性条約にはまだ具体的な数字が出てこないため、分かりづらさの一因にもなっています。
生物多様性条約会議は10月11日から3週間にわたって開かれます。会期中、名古屋市などでは市民参加の里山探検ツアーや会場周辺を走るジョギング大会などサイドイベントも行われる予定だそうです。
『生物多様性』とは一般的にはまだまだ認知されていないワードですが、地球が私たち人間のためだけに存在するのではないということを、この会議によって多くの人々が考えるきっかけになればと思います。
(産経ニュース)