ボーイング「787」 CO2排出量2割減「夢の旅客機」

 米航空機大手ボーイングの次世代中型旅客機「787」が昨年12月、初の試験飛行に成功し、年内に納入される見通しとなりました。燃費効率が高く、CO2排出量や騒音を大幅に減らすことに成功した「夢の旅客機」と呼ばれているそうです。
 航空会社約230社が加盟する国際航空運送協会(IATA)は昨年10月、2020年までに燃料効率を1.5%向上させ、航空機によるCO2排出量を50年までに05年比で半減させる目標を掲げました。航空機が排出するCO2排出量は世界全体の2%程度とされますが、787をきっかけに環境に配慮した航空機の開発が進むことは間違いないでしょう。

  787の最大の特徴は、CO2排出量が従来機の2割減という環境性能です。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と英ロールスロイスという世界の2大エンジ ンメーカーが携わった燃費性能に優れた高性能エンジンを採用したことが最大の要因ですが、そのほかにも炭素繊維と樹脂の複合材を機体に使用。アルミ製だった従来機より9トン近く軽量化したことなども寄与しました。

  コストパフォーマンスも見逃せない点です。燃料効率が向上したことで、座席当たりの運航コストを1割削減。腐食しにくいため、整備費を3割近く抑えることができるといいます。飛行中の騒音が圧倒的に少ない点も売りとのこと。空港域内で、離着陸時に85デシベル以上を感じる場所は6割減といいます。
  機体が小さい割に航続距離が長いこともメリットとなります。標準型の787~8型機は座席数210~250席、航続距離1万4200~1万5200キロで、従来は大型機しか飛ばせなかった長距離路線にも対応可能です。搭乗率が低い路線にも配置できるため、コストを抑えることができるというわけです。
  787には三菱重工業や川崎重工業、東レ、富士重工業など日本企業の担当比率がこれまで最高の35%に上り、日本の航空機技術が高水準にあることも証明されました。08年5月以来、製造上の不具合などで納入が再三、延期されたものの、09年10月現在で受注は840機と、「空前の大ヒット」といわれています。

  全日空は04年8月、787の第1号ユーザー(ローンチカスタマー)としてボーイングの工場に技術者4人を派遣し、自社の運航経験やニーズを設計に反映させてきました。この結果、エンジンに負担をかけにくい推力コントロール機能をつけたり、天井に水滴を吸収する素材を使い、集めた水滴をエアコンや機内の保湿に活用するといったきめ細かなアイデアも盛り込まれたそうです。

  同社は「新機材導入によって、環境負荷の軽減だけでなく、コスト抑制効果にも期待している」としています。11年度には787をはじめ、低燃費機材の保有比率を半分程度にまで高め、アジアだけでなく、米ワシントンやニューヨークなどの長距離路線に導入する予定です。

 CO2削減が困難とされていた旅客機も、様々な技術や改善が盛り込まれ、こうした商業ベースでも実用的な環境配慮型旅客機の誕生となりました。これにより、航空業界にも環境配慮製品の促進的な開発や導入を、より積極的に進めていく流れができることを期待したいと思います。


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このページは、green plusが2010年2月 2日 13:18に書いたブログ記事です。

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