原発ゼロのシナリオに鉄鋼業界が懸念

 政府がとりまとめを急ぐ中長期のエネルギー・環境戦略に、鉄鋼業界が警戒感を高めています。政府・民主党が原発依存率について「ゼロ」へ傾く動きのなか、 電気料金の上昇が電炉などの経営に大きく響くことを懸念しています。

 スクラップ(鉄くず)を電気炉で溶かして再生し、主に建材などに加工するのが電炉業。安価な電力を使うために夜間に操業を集中させる「フクロウ操業」が常態化しているものの、電力料金上昇の影響は大きいものがあります。

 政府が示した原発依存率「ゼロ」「15%」「20~25%」の3つのシナリオのうち、ゼロでは電気料金が最大2010年比で2.1倍に上昇します。日本鉄鋼連盟では、この場合、電炉業全体で電力料金の負担増の額が、2011年度の経常利益の2.6倍にのぼると試算します。

 韓国や中国からの輸入鋼材もじわじわと浸透する中で、コスト上昇分の転嫁は難しく、鉄連の意見書では「家族を含め5万人もの生活が失われる」としました。

 では鉄連が原発依存率が「20~25%」のシナリオなら良しとしているのかというと、そうではありません。そもそも今回の政府の3つのシナリオ自体について、「表向きは原発比率を選ぶ形なのに、実際には温暖化ガスの削減量も選ぶ『抱き合わせ販売』だ」(宮本武史常務理事)として、疑問視しています。

 政府の3シナリオでは、原発比率ゼロと15%の場合は温暖化ガス排出量を2030年に1990年比で23%削減、原発比率20~25%では 25%削減するとしています。原発の比率の変化はCO2の排出削減にも大きく影響するはずですが、コストが割高な再生エネルギーの導入比率を大幅に高めてCO2排出増を抑える形になっています。このため「温暖化ガス削減の目標で無理をしなければ、電力料金の値上がりも圧縮される」と鉄連は主張しています。

(日本経済新聞)

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このページは、green plusが2012年9月13日 09:11に書いたブログ記事です。

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