欧州連合(EU)の排出量取引制度は、30カ国の約1万2000の事業所や発電所のCO2排出量に上限を設け、上限を超えた分について排出権の購入を義務付けています。同制度はEUの温暖化対策で重要な役割を持ちます。
しかし欧州の鉱工業生産の落ち込みを受けて、排出上限に達しない企業が増えた結果、排出権の供給は数億トンにまで増えています。EUの暫定データによると、昨年の排出権市場で取引された排出権の規模は2%強減りました。これに従って、価格も下がっています。排出量上限を突破した企業は現在、CO2排出1トンに対して約7ユーロ(約730円)程度支払っています。これは昨年同時期の価格と比べると60%安いです。
排出権獲得コストが低いということは、CO2を大気に排出するコストが低いことであり、電力会社に石炭の使用量を増やせる余地が出てくることを意味します。
さらにロイター通信の調査によると、発電に伴う利益は、基準となるドイツの石炭火力発電所の発電する電力価格を基に算定すると、年初来約30%上昇し、 2008年以来最高の水準にまで達しているとのこと。ドイツの無煙炭燃焼火力発電所の発電量は前年比で13.5%増える可能性があります。
ドイツの大手発電会社のトレーダーは「自社の発電設備に石炭を燃やすものがあれば、それが亜炭でも無煙炭でも、燃やせば高い利益率の恩恵を受けられるだろう」と述べました。
実際、欧州最大の電力市場を持つドイツの電力会社各社は、今年初めから断続的に石炭火力発電所の利用を増やしています。ドイツ・ライプチヒの欧州エネル
ギー取引所(EEX)のデータによると、今年1~5月のドイツの日中の原子力と化石燃料による発電のうち、無煙炭と亜炭が占める比率は、53~68%に達
しています。
(時事通信社)
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