研究チームは、コンピューターモデルに基づく現在の予測では、温暖化が進んだ場合にこのプロセスが加速する可能性が過小評価されていると警告しています。
栽培面積が温帯の2億2000万ヘクタール以上を占める小麦は、地球上の最も広範囲で栽培されている作物です。メキシコにある国際トウモロコシ・コムギ改良センター(International Maize and Wheat Improvement Center、CIMMYT)によると、国によっては摂取カロリーの最大50%、タンパク栄養の20%を小麦に頼っています。
2010年には小麦輸出国のロシアで干ばつや森林火災が起き、世界の小麦価格が2年にわたって高騰。気候によって崩壊する国際供給網の脆弱さを浮き彫りにしました。
温室効果に関するこれまでの実験では、季節外れの高温、特に作物の生育期の終盤に異常高温が起きると、作物が老化することが分かっています。植物が耐えられる範囲を超える高温が、光合成を行う細胞器官を破壊してしまうのです。
米スタンフォード大学(Stanford University)のデービッド・ロベル(David Lobell)氏率いるチームは、インドのヒンドスタン平野(Indo-Ganges Plains)の衛星データ9年分を精査し、統計的手法を用いて、高温が小麦に及ぼした影響だけを抽出しました。
すると、気温が長期平均よりも2度上がると小麦の生育期間が9日短くなり、総収穫量が20%減っていたことが明らかになったとのこと。
世界各国は国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate Change、UNFCCC)の下、温暖化による有害な影響を避けるためには、気温上昇を産業革命前のレベルから2度以内に抑えるという目標を掲げています。ですが、現在の上昇傾向が続けば、気温は目標値の2倍まで上昇すると研究チームは警告しています。つまり「世界的に気温が4度上昇するという、かつては極端な場合として考えられていたシナリオが、2060年にも現実となる」といいます。
前年11月、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、人間が引き起こした気候変動によって熱波や酷暑は頻度も激しさも増しており、そうした極端な気候が将来増えることはほぼ確実だと結論付けました。1000ページに及ぶ報告で、IPCCは温暖化ガスの排出が衰えることなく続けば、2050年までに5年置き、21世紀末までには1年置きか毎年というペースで、20年に1度の酷暑に襲われるようになると警鐘を鳴らしています。(AFPBB News)
地球温暖化で降雨パターンも変動しやすくなっており、そのため小麦が弱りつつあり、生育に深刻な影響を及ぼしています。IPCC第4次評価報告書では、温暖化したときの低緯度における作物の収量減少は、温暖化がないときに比べ、途上国における飢餓人口を増加させると予想されています。
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