生きもの名古屋議定書「始まりに過ぎぬ」 NGO不満も

 「名古屋議定書」と「愛知ターゲット」を採択し、30日未明に閉幕した国連地球生きもの会議(生物多様性条約第10回締約国会議=COP10)。最重要議題の採択という成果を上げた名古屋での生きもの会議だが、議定書とターゲットは、自然保護の現場を知るNGOが求めていた内容とは、隔たりもあります。世界から集まったNGOからは、採択を喜びつつも内容には不満の声が出ました。

 

 遺伝資源の利用から得られる利益の公平な配分(ABS)についての国際ルール「名古屋議定書」。「同意できないが採択はじゃましない」。最後の最後まで議論がもつれた全体会合の場で、ベネズエラやキューバ、ナミビア、ボリビアが次々に発言しました。妥協の末に採択されました。

 途上国の立場から、会見などで厳格な議定書を求め続けたマレーシア「第三世界ネットワーク」のチー・ヨクリンさんは「法令を守っているかのチェック機関をどこに置くかが各国の判断任せになった。伝統的知識の利用に対する先住民族の権利も弱い。議定書がないよりは良いが......」と複雑な表情でした。

 欧州のNGO「エコロパ」のクリスティーネ・ワイツゼッカーさんも、内容には満足していません。「いまはハッピーな瞬間ではない。次の段階へ進む始まりにすぎない」。議定書が発効後4年以内に見直されることが決まっているため、「厳しい内容になるよう働きかける」と語りました。

 日本の学生などでつくる「国際青年環境NGO A SEED JAPAN」も、チェック機関が厳格に定まらなかったことなどを問題視しています。各国代表団へも主張を伝え続けた小林邦彦さん(22)は「発効後4年までの見直しで修正されるようにしたい」と話しました。

 2020年までの世界目標「愛知ターゲット」で注目されたのは、保護区の目標値。

 陸域17%、海域10%という折衷的な結論に、米国の「コンサベーション・インターナショナル(CI)」のラッセル・ミッターマイヤー会長は肩をすくめつつ、「(この目標値でも)いいよ」と話しました。

 CIは、陸域25%、海域15%を求めてきました。採択のための全体会合が中断しているときには中南米などの政府代表団の間を回り、高い目標値になるよう説得したようです。「陸域の現状(約14%)から17%までは、まず重点的な地域を優先して保護区にしたい。でも、我々はそれ以上に拡大するよう取り組む」

 海域20%を訴えていた「グリーンピース」。海洋問題担当の花岡和佳男さん(33)は「一つの目標を決めたことには意味がある」としつつ、10%にとどまったことは残念と言います。「この目標にとどまることはなく、20%、さらに40%になるように力を尽くす。海域の保護区が広がれば魚が増え漁業も持続可能にできる」と話しました。

 気候変動枠組み条約締約国会議(COP)は議定書を策定するまでに至らず合意にとどまったので、今回のCOP10では形としてまとめられたことは良かったのではないかなと思います。生物多様性と気候変動は密接に関係しているためどちらも早急に各国が対応を取る必要があると思います。実際に改善のために動くのは市民レベルであるため、政府レベルでの政策決定をCOP16で行い何らかの成果を期待したいと思います。

朝日新聞社

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カノヱな日々 | 熊本、阿蘇のホームページ制作会社 - COP10を振り返る (2010年11月 1日 08:54)

『COP10』 閉会しました。どんな成果があったのか振り返ってみたいと思います。... 続きを読む

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このページは、Fujiwara Sakiが2010年10月31日 21:12に書いたブログ記事です。

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