ドイツのSAPは9月20日、企業のCO2排出やその他の環境影響要因の計測、緩和、取り引きを支援するオンデマンド型カーボン管理サービスの最新版「SAP Carbon Impact OnDemand 5.0」を発表し、最新版で同サービスを米国Amazon.comのクラウド・プラットフォームに移行したことを明らかにしました。
「Carbon Impact OnDemand 5.0は、われわれがAmazonのクラウドで運用する最初のサービスだ」と、SAPのエグゼクティブ・ボード・メンバーで、技術およびイノベーション・プラットフォームを統括するビシャル・シッカ(Vishal Sikka)氏は語っています。
「Amazonのクラウドを利用することで、低コストで柔軟なパフォーマンスとスケーラビリティを実現できるという大きなメリットが得られる」と同氏。Carbon Impact OnDemand 5.0を利用する顧客は、AmazonではなくSAPと直接やり取りすることになるそうです。
SAPは同サービスを皮切りに、名称に「OnDemand」を含む多数の補助的なクラウドベース・サービスを顧客に提供していくそうで、シッカ氏は「われわれは、SAP Business Suiteでカバーされている業務のさまざまな周辺領域にも対応していかなければならない。今回のカーボン管理もその1つだ。Amazonのプラットフォームを使うオンデマンド・モデルは、その目的にぴったりだ」と語っています。
Carbon Impact OnDemand 5.0は、「企業におけるCO2排出にかかわる現状の完全な可視化」を目的としており、SAP Business Suiteとともに、あるいは単体で利用できます。
ユーザー企業は、各ビジネス部門のエネルギー消費に関する情報をアップロードまたは集約でき、同サービスはその結果をレポートやダッシュボードに要約して提供します。
企業が同サービスに情報を入力するには、電力・ガス会社などエネルギー供給業者との間でEDI接続をセットアップします。同サービスでは、物流管理や車両管理ソフトウェアのデータのマイニングも可能。また、社員の出張時のエネルギー消費について調べるための調査テンプレートも用意されています。
「企業は通常、多数のシステムにCO2排出に関するデータを保存している」とシッカ氏は語りました。Carbon Impact OnDemand 5.0はさまざまな計算機能を備えており、報告された企業活動に関するすべての情報からCO2素排出データを導き出せます。
Carbon Impact OnDemand 5.0では、ディスカッション機能や、CO2排出に関する計算式をユーザーが独自に作成できる機能など、多数の新機能が提供されています。また、同サービスの指標には、企業によるCO2排出量報告の標準化と促進に取り組んでいるCarbon Disclosure Projectの指標が統合されています。
シッカ氏曰く、企業がCarbon Impact OnDemand 5.0を利用することで影響を受ける米国の業界向けに、SAPは同サービスで、米国環境保護庁が最近施行した温室効果ガス排出量報告規則に準拠した報告を提供するそうです。
SAPは、環境関連報告ソフトウェア・ベンダーの米国Clear Standardsを2009年に買収し、カーボン管理サービスを獲得しました。シッカ氏によると、Carbon Impact OnDemandを利用する顧客数を明らかにしませんでしたが、ハイブリッドカー・メーカーの米国Fisker Automotive、ソフトウェア大手の米国Autodeskなど、多くの大企業が利用しているとのことです。
「われわれは、将来的に、われわれのすべての顧客がこのサービスを必要とするようになると考えている」(同氏)
近年注目されているクラウドコンピューティングを活用したサービスとしては非常におもしろいのではないでしょうか。日本国内で使えるようなサービスの登場も期待されます。