企業の温室効果ガス排出量に上限を設け、過不足分を売買する国内排出量取引制度の環境省原案が30日、明らかになりました。
最大の焦点だった企業に排出枠を割り当てる方法については、同省はこれまで企業ごとの排出量を決める「総量方式」を主張していましたが、一部産業界に配慮して、提示する3案のうち2案に、生産量当たりの排出量に上限を設ける「原単位方式」原単位方式を盛り込みました。31日の同省審議会で示す方針です。
原案によりますと、制度の対象になるのは、電力会社やメーカーなど温室効果ガスを大量に排出している企業で、2013年度から実施されます。規制を嫌う企業の海外移転を防ぐため、鉄鋼会社など厳しい国際競争にさらされている企業や、排出量の多い企業には排出枠の優遇を検討しています。エコカーや省エネ家電など、排出量削減に貢献する製品をつくる企業への優遇策も考えられています。
今回の案のうち、一つは電力会社だけに原単位方式を導入し、そのほかの企業は総量方式にして、業界ごとの基準や過去の排出実績に基づいて国が排出枠を割り当てる方式となっています。電力会社には、1キロワット時当たりの排出量の規制値を設け、排出量が多く、経済全体への影響が大きい電力会社に過度な負担がかからないように配慮した形となっていますが、発電量が増えれば、全体の排出量も増える可能性があります。
もう一つの案は、電力会社も含めたすべての対象企業に原単位方式を導入する案です。産業界には受け入れられやすい一方、生産量が増えれば排出総量も増える恐れがあり、結果として全体量の削減につながらない可能性もあります。
三つ目は対象企業すべての排出量を総量方式で規制し、足りない排出枠は公開入札で買わせる案です。排出量取引制度の基本形ですが、この制度ですと、排出枠購入の企業負担が急に生じるため経済界の反発も予想されますが、全体量の削減には大きく貢献するため、世界の潮流に沿った案と言えます。
排出量取引制度案は、経済産業省も検討しており、両省の案が出た後、政府内で一本化を目指す予定となっています。
(朝日新聞)