全国の一般ごみの総排出量はピークの12年度(約5483万トン)から漸減、20年度は4811万トンになりました。8年間で、1割強のスリム化に成功したことになります。政府は24年度に約5千万トンに減らすという整備計画をたてているが、早くも到達してしまいました。資源のリサイクルが進み、家庭や会社でごみを減らす取り組みが進んだことに加え、景気の低迷によって企業活動や消費活動が鈍くなっていることが背景となったようです。
■施設増加
ところが、同じく政府が推進してきた、ごみの発電量までが減少する結果になりました。総発電量は20年度、前年比約3%減の6935ギガ(10億)ワット時と減少しました。この量は、日本の総発電量の0・6%に相当するが、21年度はさらにごみ排出量の減少が見込まれており、発電も減ると予測されています。
ごみ発電は、(1)ごみ焼却で生じる熱を活用して発電するため、エネルギーを有効に使える(2)自分の施設で使う電力をまかなう(3)余剰分は電力会社に売り、地域で使うことができる?といった「一石三鳥」の策であるため導入する自治体が増加してきました。発電施設は10年度は全国で201施設しかなかったが、20年度には300施設に増え、発電効率も改善されてきたところでした。にもかかわらずの総発電量の減少、ごみが減少していることに加えて、ごみの回収の方法の変化が、総発電量が伸びない原因となっているとみられています。家庭のごみの6割を占めていた容器包装を減らすため、国は生産者であるメーカーに処理の責任を担わす容器包装リサイクル法(7年)などを制定しました。発泡スチロールやペットボトルといった容器や包装が、分別の徹底によってリサイクルが進められました。しかし、発泡スチロールやペットボトルなどは熱カロリーが高いため、焼却に回されなくなると、ごみ発電量はマイナスになるという結果を生んでいるようです。
■バランス
京都議定書で課せられた24(2012)年までに温室効果ガス排出量を2年比6%削減を到達するため、ごみ発電量を増加させる方針をたてているが、現実には増加どころか、減少してしまっています。環境省廃棄物対策課では、「このままだと増加の目標達成は厳しい」と厳しい状況に追い込まれてしまいました。
鳥取環境大・サステイナビリティ研究所長、田中勝教授は「リサイクルでごみの量を減らすのは、取り組みとして必要だ」と指摘しました。その上で、「自治体の中には汚れたプラスチック容器を洗うまでして手間やコストをかけ、リサイクルに重点を置いている。汚れたプラスチックなどは発電にまわすなど、リサイクルとごみ発電をバランスよく考える必要があるのではないか」と話しています。
ごみの分別が進み、一般市民にも分別、リサイクルの細やかな活動が浸透してきているのが分かります。今後は、田中勝教授が話すように、新しいごみ発電を考え、より効率のよい生活環境を作り出していくことが求められていくのではないでしょうか。また、環境問題は私たちの日常生活と先進科学、経済と密接に関わっているということも改めて気付くことができました。